FDA(アメリカ食品医薬品局)のウェブサイトの和訳と解説
アメリカの食品における栄養成分表示は義務であり、表示項目も日本の栄養成分表示より多い点が特長です。1993年に成立して以来、約20年間に渡ってアメリカ国民の食品選択のための有益な情報を提供してきました。表示のルールは2006年にトランス脂肪酸の表示が義務付けられて以来、今回が久しぶりの改訂となります。
ちなみに日本では食品への栄養成分表示は任意でしたが、平成25年に成立した食品表示法により日本でも栄養表示が義務付けられる予定です。
アメリカの栄養表示で特長的な点はその表示を見ることによって、その食品1食分から1日必要量(または上限量)の何%を摂取することになるかわかるようになっている点が挙げられます。つまり、国が「1日に必要な(または制限しなければならない)栄養成分及びその量を定めており、食品への表示も義務付けている。」ということになります。
それではまずは現行の栄養表示の各表示について見ていきたいと思います。
栄養表示ラベルで一番上に位置するのは一人前の分量です。一人前の分量は類似の食品との比較がしやすいように共通化されています。すなわち、カップ(大さじ12杯)や個数などよく知られている表記がされており、補足としてg重量などメートル法による表記がされています。
何人前の分量かという点は食品のカロリーや栄養成分の値に大きく影響します。食品1パッケージに示されている一人前の分量と1パッケージに何人前入っているか、自分は何人前の量を食べようとしているかについて注意が必要です。
一人前の分量からどれくらいエネルギーを摂取することになるのかの指標がカロリーとなります。アメリカの食品は一人前当たりのカロリーとそのカロリーの内、脂質に由来するカロリーがどれくらいあるのかについても併せて表示されています。General Guide to Calories に基づき、1日 2000カロリー摂取を基準とすると、一人前のカロリーとして40カロリーなら低カロリー、100カロリーなら中くらい、400カロリー以上なら高カロリーが目安です。、
アメリカの食品ラベルに表示の栄養素は「制限すべきもの」と「十分に摂取すべきもの」の2グループに大別されます。それぞれのグループの詳細は以下の通りです。
「制限すべきもの」:総脂質(飽和脂肪、トランス脂肪)、コレステロール、ナトリウム
これらの栄養素は通常の食生活で十分に摂取可能もしくは摂り過ぎに注意すべき栄養素となります。
「十分に摂取すべきもの」:食物繊維、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄
これらの栄養素は多くのアメリカ人に不足がちの栄養素となります。十分な摂取によって、病気の予防や健康の改善が見込まれます。
いずれも1食分当たりの重量gが1日摂取許容量もしくは推奨量のどれくらいの割合%を示すのかとともに記載されています。
脚注部分には(表示の)1日摂取許容量及び推奨量は1日当たりの摂取カロリーが2000カロリーの人を基準としている旨の記述が必要な他、具体的な栄養成分の1日当たりの摂取推奨量も併せて記載することになっています。ただし、商品サイズが小さい場合は摂取推奨量の記述は不要となっています。なお、この脚注はどの食品にも共通事項となっており、食品毎に異なるということはありません。
図の黄色部分・・・(ラベルに表示の)1日摂取許容量及び推奨量は1日当たりの適正摂取カロリーが2000カロリーの人を基準にしています。適正摂取カロリーによって、この数値は上下する場合があります。
図の白色部分・・・1日摂取許容量 適正摂取カロリーが2000カロリーの人は1日当たりの摂取量について総脂肪 65g以下(内、飽和脂肪 20g以下)、コレステロール300mg以下、ナトリウム2400mg以下、炭水化物300g(内、食物繊維25g)が適正量です。
なお、この1日あたりの適正摂取カロリーが2000カロリーの人にとっての、その食品1食分を摂取することにより補充できる各種栄養素の1日適正摂取量に関する割合%をDV(The Percent Daily Value)として定義しています。
1日摂取量%は1日の適正摂取カロリーが2000カロリーの人に合わせて設定されたものですが、自分にとっての適性摂取カロリーがどれくらいかを把握している人は少ないかもしれません。ですが、%DVはその食品中に含まれる栄養素の割合を示す指標として、食品選択の参考になります。
%DVについて大雑把に考えると、対象栄養素について、5%以下は低い食品、20%以上は高い食品となります。%DVの利用方法として以下の事項が挙げられます。
*類似食品同士の比較
類似食品で1回の消費量も同じ食品の栄養素を比較することにより、どちらを選んだ方が良いかの指標とする。
*強調表示内容の妥当性確認
例えば低脂肪、減脂肪、無脂肪など脂肪分が少ない食品であることを強調している表示がある場合には%DVを比較することによって、その程度を食品間で比較できます。
*食事内容の調整
昼に脂肪分の多い食事をした時は夜は脂肪分の少ない食品を選択するなどに%DVを確認して調整することができます。大事なのは1日の合計摂取量を100%DV以下に収めることです。
*栄養表示にはカルシウムのようにDV%のみの表示で重量表示が省略されているものがあります。
*トランス脂肪酸、糖質、タンパク質はDV%の表示はありません。
・トランス脂肪酸については専門家でも摂取適正量の知見を持ち合わせてないためにDV%の表示がありません。しかし、摂取を控えることを推奨しています。
・タンパク質については多量の摂取が健康に良いか悪いかについての知見がないためDV%の表示がありません。
・糖質については摂取推奨成分としてのリストに挙がっていないため、適正摂取量が設定されていないためDV%の表示がありません。
改正後の主な特徴は次の通りです。
*一部の表示について強調表示が必要になります。
1パッケージあたり何食分あるか、1食分当たりのカロリーについて文字のフォントサイズが定められたり太字で表示など強調表示することが義務付けられます。
*栄養成分の表示方法が一部変わります。
・DV%を左側に記載することによりDV%により注意が届くようにします。
・砂糖について人工的に添加した砂糖がどれくらいあるかについても表示が義務付けられます。
・十分に摂取すべき栄養成分のリストがリニューアルされます。
ビタミンDとカリウムが新たに義務表示となりますがビタミンAとビタミンCは義務表示ではなくなります。また、従来%DV表示だけで良かったが、今後は重量表示も必要となります。
以上のように、表示内容自体は同じでも消費者が摂取カロリーや栄養成分により注意が届きやすくなるような工夫がされた他、十分量摂取すべき栄養成分の見直しが行われている点が特徴的です。