Dietary Supplements(栄養補助食品)

 ダイエットサプリ(以下、サプリ)は日本ではいわゆる健康食品として国内に浸透しています。健康食品自体の歴史は古く、日本では高度経済成長が一段落し、人々の関心がお金儲けから健康へと移っていったことが発端とも言われていますが、現在のような錠剤、粉末、液体のような医薬品と同じ形態を取る食品が多くなったのはアメリカの影響が少なからずあると思われます。

 アメリカの健康食品の歴史はそれよりもさらに古く、1938年に連邦食品・医薬品法(FD&C ACT)で表示に関する規制がされている事実を鑑みると1938年以前と考えられます。アメリカの場合、病気になった場合の医療費が高額なために医薬品と比べて価格が安いサプリを病気の治療や予防のために摂取する習慣があります。

 

Dietary Supplements(栄養補助食品)とは

 健康補助食品とは1994年に制定された栄養補助食品健康教育法(以下DSHEA)によって、定義された用語で「日常の食事に含まれている栄養成分を補う食品で口から摂取するもの」となります。具体的な成分はDietary Ingredient(食品成分)として定義されており、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素、臓器組織,腺、代謝物などが挙げられます。形態としては抽出または濃縮物されたエキスや粉末が多いです。健康補助食品はあくまで補助食品なので、通常の食品と混同されるような商品表示は禁止されており、販売パッケージには健康補助食品と明記することになっています。ここでDietary Ingredient(食品成分、以下DI)とはDSHEA制定前にすでに食品成分として販売されていたもに限り、そうでないものについては全てNDI(New Dietary Ingredient、新規食品成分、以下NDI)となり、販売前にFDAへ申請して安全であることの評価を受けないと販売することができません。

Dietary Supplements(栄養補助食品)の法規制概要

 アメリカでは人が口から摂取するものとしては食品と医薬品のカテゴリーに大別しています。そして、食品はさらにConventional Food(一般食品)とDietary Supplements(栄養補助食品)にカテゴリー分けしています。

 食品製造等(製造、加工、梱包、保管を含む)施設は製造等を行う場合は施設登録自体はFDAへの登録は必要ですが、登録済の食品製造等施設が栄養補助食品を新たに製造等する場合は登録や届出をする必要はありません。ただし、21CFRの#111に規定されているように栄養補助食品の適正製造基準等を満たしていなければなりません。
 ただし、上述のように栄養補助食品の成分がNDIのものについては申請を行い、FDAによる安全性評価をパスする必要があります。

近年の健康被害発生例

  2013年11月にUSPlabs社製 OxyElite Pro(オキシエリートプロ)が自主回収されました。

  USPlabs社はテキサス州ダラスにある栄養補助食品を製造している会社です。製品のラインアップは主にボディービルダー向けのものですが、一般女性も痩せ薬として利用しているようです。有効成分としてDMAA(ジメチルアミルアミン)が成分に含まれおり、この成分が食欲減退作用を引き起こすものの、副作用として脈拍数上昇をはじめとする生理異常を起こします。今回、副作用の1つである肝炎の報告例が多いかつ重篤(死亡例あり)な事例も生じていることが結果的に該当製品の自主回収につながったといえます。

  ちなみに日本は販売実績はないようですが、個人輸入代行という名目でのネット販売は上記の注意喚起が発表されるまでは旺盛だったようです。すでに当該商品を販売しているサイトはないようです。(商品のレビューはネット上に残っています。)ちなみにオキシエリートプロの使用量はまるで医薬品並みに規定されており、過剰摂取が即健康被害につながるのは理解し易いです。

  使用量に関する規定が厳密に定められているということはそれだけ副作用が強いということです。サプリメントの中には薬理的作用の強いものもあり、そのようなものはサプリメントという名の脱法ドラッグです。また、ネット販売で安易に海外品を購入するのは奨めません。上述の通り、個人輸入代行に過ぎないため代行者(名目上は販売者)自身もその商品が本当に安全性が確認されたかどうかなどは関知していないからです。

  今回の事案はそもそもDMAA自体が元々、医薬品成分であり、食品成分としてはNDIで事前申請が必要だったにもかかわらず、事前申請がなかった点が法令違反です。今回の件でDMAA含有のサプリは市場から撤退することになるでしょう。しかし、DMAA含有にも関わらず、その表示をしないで販売しているサプリのある可能性を考えると油断できません。また、さらに問題なのはこのような事件が発覚してもなお、DMAA含有のサプリを欲しい人がいる不安が拭えないことです。

引用元1: http://www.drugs-forum.com/forum/showwiki.php?title=Methylhexanamine
引用元2: http://en.wikipedia.org/wiki/Methylhexanamine

日本の事情

 日本の健康食品ブームはテレビ通販やCMによるところが大きいといえます。利用目的は外食など食生活が偏っている場合の栄養補給的な意味合いの他、CM効果で体に良いと言われている成分の補給、ボディービルダーの体作りなどが挙げられます。

 日本では法律的な意味での栄養補助食品というカテゴリーは存在しません。栄養機能食品、特定保健用食品など特定の栄養素を強調したカテゴリーは存在します。いずれもアメリカと違い、そのカテゴリーの食品であることをラベルに明記するには一定のルールを守る必要があります。