FSMA 食品安全近代化法
食品安全近代化法(Food Safety Modernization Act、略称:FSMA)とは
アメリカ国内の食品衛生に関わる規制は連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)及び連邦規制基準21条(cfr21)が土台となっており、これまではこの土台を補強する形で
数年ごとにに新たな法律が成立していきました。2011年に施行された本法はこの土台を再構築する役割を担っています。2016年、現在もそれは構築中ですが、いくつかのカテゴリーについては最終規則が完成した(=実際に運用ルールが確定した)ものもあります。本章ではまず、概要を理解した後、確定した個別の規則について、順次触れていきます。
食品の安全性を講ずる上で2つの点が重要です。1点目は問題が起きた時に適切な処置をすること、2点目は問題が起きないように適切な予防策をとることです。FSMAはアメリカの食品衛生法を近代化するとともに前述の2点目である予防策をとることを目的としています。
今回の改訂は1938年以来の大きなものとなりました。食品は国内外を問わずあらゆる場所で製造され、その流通経路も車両、鉄道、船舶、航空機など多岐に渡ります。そして、その輸送の過程で病原菌も変化しており、時には殺菌するのが難しくなっているケースもあります。食中毒の影響を受けやすい人はお年寄り、持病のある方です。これらの理由により、21世紀に対応した食品安全システムが求められています。
事実上、農場から食卓までのあらゆる時点で病原菌(例:サルモネラ菌、大腸菌群、リステリア菌)が混入し、広がる可能性があります。アメリカでは年間3000人が食中毒で亡くなり、6人に1人が食中毒に罹っています。病原菌に汚染される可能性のある食品は多岐にわたります。ホウレンソウ、メロン、ソフトチーズ、ピーナッツバター、卵などがその例です。
食品の安全管理に関しては全ての人に責任があり、気を緩めるわけにはいきません。FSMAに基づいてFDAは新しい食品安全基準を設け、それが満たされているかどうかチェックします。この法律では食品安全の全ての工程において、安全対策を構築することに重点を置いています。対象は国内で製造される食品と海外からアメリカ国内に入ってくる食品の両方となります。例えば農家には野菜や果物の栽培、収穫自において、すでに知られている安全性リスクに基づいて危険を防止することが新しい法律では定められています。このリスクには動物の畑への侵入、労働者による不衛生な食品の取り扱い、病原菌に汚染された肥料や水などを含みます。また、食品や動物用飼料の製造施設においては、予防のためのチェックポイントとそのための手段を設け、さらにそれが有効に機能しているかどうか監視することが定められています。例えば調理工程における温度管理はリスクを最小化または予防できる工程の一つといます。これらの制御方法は元々は一部のリーディングカンパニーだけで共有されている概念でしたが、今回の法改正によって、全ての会社において求められることとなりました。
さらに海外からアメリカ国内に輸入されてくる食品の国境における検査も重要です。認証は食品がアメリカに到着する前に発生し、その際に輸入者に対して、いつくもの規則が設けられています。輸入者は海外のサプライヤーが食品安全の認証を受けていることについて責任を持つ必要があります。これらの規則によって、問題の発生を未然に防ぎます。FSMAではこれらの法律を施行するためのツールとして、強制的なリコール命令を行うことのできる権限や疑わしい食品の出荷を差し止める権限をFDAに付与しています。
FSMAは食品安全のシステムを全面的に改訂しますが、FDAだけではそれを実行することはできません。製造施設、政府機関、国民の全員が食中毒を防ぐための役割を果たします。
法律が作られるまで
アメリカでは法律が決まった後、具体的にどのように運用されるのでしょうか。このチュートリアルビデオではFSMAを例に易しく解説されています。
法律は大統領が法案に署名した後に、正当な理由で直ちに全てが変わるわけではありません。法律を施行するための時間が必要であり、FSMAの元でその施行権限がFDAに委ねられます。FDAは法律を施行するための規則を作り、法律が求める内容を具体的な内容に落とし込みます。
このプロセスはオープンになっており、国民全員に参加の機会があります。まず、規則案(Proposed Rule)が連邦公報に載り、それはインターネット上regulations.govで誰でも見ることができ、一定期間(30日間から90日間)コメントすることができます。つまり、誰でも発言できます。
次のプロセスとして最終規則が発行されます。この規則は多くのコメントや数回の改定の末にできた規則です。しかし、その場合にも有効日までは法的強制力はありません。有効日までの間に企業は不服を申し立て、新たな要請をすることができます。また、発行後、半年から1年の間で、小企業に対しては有効日の延長措置を取る場合があります。
全ての企業が規則を理解し、遵守できるようにするために法的拘束力のないガイダンスを発行することがあります。これは規則に遵守するための具体的な行動について、その時点でのFDAの考えを述べたものとなります。
このようなオープンなプロセスを経ることにより、FDAは複雑なニーズを把握し、FDAの最も重要な目的である国民の健康を守ることに注力しています。