アメリカ国内への食品の輸入

FDAに規制の権限を与える2つの法規制

法律として、連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)が制定され、具体的な規制は連邦規制基準で定められています。

連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)別名:基本法

、連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)はFDAの権限の拠り所となる法律で、別名 基本法と呼ばれています。基本法402項で不衛生な食品は法定基準に適合していない旨が定められており。基本法403項で虚偽表示のある食品についても法定基準に適合していない旨が定められています。基本法803項ではFDAは輸入食品において、法定基準に適合しない食品については輸入を拒否する権限があることが定められています。

連邦規制基準 別名:CFR21

 連邦規制基準(CFR21)もはFDCA同様に食品に関する規制が存在します。この規制は食品だけでなく薬剤もカバーしています。下記にCFR21の具体例を挙げます。
 

CFR21の具体例

Part 110
ヒト用の食品を製造、保管する会社の適正製造基準の現行要件
Part 113
熱処理された酸性度の低い缶詰食品の要件
Part 114
酸性食品についての要件
Part 123
海産物に求められるHACCP要件
Part 121
ジュースに求められるHACCP要件


 
※HACCP・・・生物学的、化学的、物理的な危険度を分析し、管理する食品安全管理システムです。このシステムは原材料の生産または調達から、完成品の製造及び販売、消費に至るまでを対象としています。

輸入食品の安全を保障する仕組み

FDAは上記の法規制の他に輸入食品の安全性を担保するためにいくつかのシステムを利用しています。

リスクに基づいたアプローチ Risk based approach

輸入食品の検査対象の選び方。リスクの度合いによって、優先順位を付けて選んでいきます。 特定のリスクがどの位、健康に影響を及ぼすか、その度合いを相対的に評価した上で順位付けを行っています。

外国施設検査 Foreign inspections 

FDAは当該食品がアメリカ国内の法規制に基づいて衛生的に製造されているかチェックするために外国施設の検査を行っています。

事前通知及びFDA許容試験 Prior Notice & FDA admissibility

アメリカに食品を輸出するために設けられた2つのハードルとなります。

輸入プログラム

輸入プログラムについて、内容をまとめました。このプログラムの最終目標はアメリカ消費者の健康の保護ですが 直近の目標としては当該食品が法に適合しているか否かの決定及び手続きの迅速化です。

① 輸入届出提出

まず、輸入業者、仲介業者、申請者が通関申請を税関国境防護局に提出するところから始まります。税関コードの内容に基づき当該品がFDAによる審査の要否が判断されます。また、追加の情報が必要であればFDAに伝達されます。また、関税支払保証書の提示も必要となります。

② FDAによる審査

FDAによる審査が必要となった場合、輸入支援運用管理システム(OASIS,Operational and Administrative System for Import Support)によって、FDAに電子的に情報が伝達されます。FDAによる審査の結果、流通許可が下りれば、通関手続を完了し、製品の流通販売が許可されます。また、審査の結果、検査が必要となった場合は、通関後、検査用試料をFDAに提供しなければならず、検査の結果、法規制に適合していることが確認できるめでは流通販売の許可は下りません。さらに製品が流通した後もFDAには当該製品に対する管轄権が与えられており、当該製品が法に不適合であることが判明した場合は回収等の措置を講ずることができます。

通関拒否される場合

連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)801項(a)によると検査の結果、法に不適合であることが明らかになった場合のみならず、当該製品が 1)不衛生な状況で製造、加工、包装された場合 2)製造国または輸出国において販売規制されている場合 3)不適切な表示をされているように見受けられる場合 には通関は拒否されます。

通関拒否された場合の修繕請願

申請者または荷受人はFDAに修繕請願をすることができるとされています。FDCA 801項(b)において、修繕請願は不適合となった製品について、法に適合するように、製品の使用目的を変えたり、不適切表示されたラベルを適切な表示に貼りかえるなどの修繕を行うことを請願をすることを言います。修繕請願が承認され、修繕の結果、法に適合することが確認された場合は流通販売がFDAによって、許可されます。この場合、流通許可通知には最初は保留だったが、今は許可された旨が記載されます。

修繕後も法に適合しなかった場合

90日以内に当該製品を輸出するか破棄することが義務付けられています。この際、FDAまたは税関国境防護局が、当該製品がきちんと措置されているか確認するために立ち合いを求めることがあります。製品が上記のいずれの措置も取られないままの場合、FDAは製品の差し押さえ及び荷主に対して法的措置を取ることができます。

輸入プロセス

1-1 事前通知

アメリカ国内に食品を輸入しようとする場合はFDAへの事前通知が必要となります。具体的には以下の場合です。
◆ アメリカ国内で使用、保管、流通しようとする食品
◆ 他国に輸出するためにアメリカ国内で積み替えが行われる食品
◆ 輸出するためだけにアメリカ国内に通関される食品
◆ 外国貿易地域に入る食品(アメリカ国内に入るか否かを問わない。)

事前通知は全て電子的な伝達手段で行わなければなりません。税関国境防護局(CBP)の自動商業システム/自動ブローカーインターフェイスを利用した場合は30日以内、FDAの事前システムインターフェイスを利用した場合は15日以内に審査が終わります。

事前通知提出の最低所要時間は貨物の到着後、陸上輸送の場合は2時間、航空輸送または鉄道輸送の場合は4時間、海上輸送の場合は8時間とされています。個人輸入の場合も事前通知対象品の該当する場合はやはり、FDAの確認を受けなければならず、手荷物での持込みの場合、郵送の場合は発送前に事前通知の書類を提出してFDAの審査を受ける必要があります。

事前通知の書類を提出する際の記載事項の例を下記に挙げます
◆ 製造者名(栽培者)
◆ 製造者登録番号
◆ 荷送人名(貨物を送る者)
◆ (アメリカ国内の)荷主[最終的な製品の受取人]
◆ 生産国
◆ 製品識別コード
◆ FDA製品コード
◆ 予想される到着情報
◆ 予想される船名

1-2 施設登録

バイロテロリズム法2002 第305項によるとアメリカ国内での消費目的で食品を製造、加工、包装、保管する施設は全てFDAに登録しなければなりません。

登録情報の例を下記に挙げます
◆ 会社名、住所、電話番号、FAX番号
◆ 親会社の情報(適用される場合)
◆ アメリカ国内の代理人の住所、電話番号、FAX番号
◆ 製品の商標名
◆ 食品の種類
◆ 会社の責任者の氏名、電話番号等
◆ その他、施設の問い合わせ先、会社の種類
◆ オンラインで登録する場合のURL-www.access.fda.gov

2 許容条件

FDAが税関国境防護局の要求事項に上乗せして要求する事項は下記の通りです。
◆ 原産国
◆ 製造者名
◆ 荷送人名(貨物を送る者)
◆ FDA製品コード

FDAがさらなる追加情報を求める食品の種類の例
1)酸性食品
(酸性食品を製造する場合は酸性食品製造施設の登録が義務づけられている) ・ 酸性食品に求められる情報
-各製品の製造工程表
2) 低酸性缶詰食品 ・ 低酸性缶詰食品に求められる情報 -食品缶詰 製造登録番号
-各製品の製造工程表及び缶のサイズ

 
いずれも容器の大きさ、種類、加工方法毎の製造計画の提出が義務付けられています。

食品の典型的な検査項目
◆ 包装不良
◆ 異物混入(例:カビ、昆虫の体の一部、殺鼠剤、動物の毛)
◆ 微生物(例:リステリア菌、腸管出血性大腸菌、サルモネラ菌など)
◆ 腐敗(対象食品の例:水産物)
◆ 農薬(対象食品の例:果物、野菜)
※食品の種類によってはアフラトキシン(カビ毒)や水銀・鉛(重金属)なども検査

サンプリングと検査指針
何を採取し、分析するかについて、FDAの現場スタッフには下記の2つの指針に基づいて決定されます。
◆ コンプライアンス・プログラム
調査・試料、資料収集、試験分析における活動の指針が示されています。 ◆ 現場任務
コンプライアンス・プログラムをより具体的に定めた指針

3 違反時の取り締まり手段の例

FDAが違反品と判断した場合は物理的な審査なしに製品の通関を保留することができます。
判断根拠としては
・違反品の前歴がある
・違反しているように見受けられる
が挙げられます。
このようなケースで通関保留となった製品の通関に関しては当該製品が法定基準に適合していることを示す必要があり、その責任は製品の所有者または荷受人(=通関書類の提出者)となります。試験は民間の研究所で行うことができます。試験結果をFDAが受け入れればアメリカ国内への通関を許可します。

特定国の特定企業の特定食品が繰り返し問題となっているケースも同様に通関保留となりますが、この場合はその特定企業が輸入警報ならびにFDAの規制手続きマニュアルに記載されている一定の条件を満たせば免除対象になる可能性があります。

FDAは基本法の304項に従って輸入食品を差し押さえることができます。具体的には次の通りです。
1.健康に有害になりえるためFDAが通関保留または拒否をする措置通知を出され、それを受理した後にもかかわらず。国内販売されたもしくは国内販売される可能性が高いもの
2.製品の詐欺的な表示のあるもの
3.FDAが以前に拒否した製品であると特定したもの

FDAは基本法の306項(b)(1)に従って、個人が食品をアメリカ国内に輸入したり、輸入提案するのを禁止することができます。これは過去に食品に関する重大な法律違反を犯した者や健康に重大な危害をもたらす食品を輸入しようとする者を締め出すことができるという意味です。また、FDAは警告状を出すことができます。これは例えば、企業がFDAの認可なしに食品を輸入した場合に発行されます。発行された警告状はコピーされ税関に送られる再配達要請書に添付されます。さらにFDAは自主回収を企業に命ずることができます。とくに潜在的な健康上の危険がある場合はなおさらです。

4 物理審査なしの保留措置-輸入警報について

FDAが持っている情報を他の通関品に焦点を当てるために解放し、輸入製品がアメリカの法規制に適合することを保証する責任を輸入業者に帰属させ、製品の取り扱い方を全国一律にします。輸入警報は現場に指針を提供し、FDAが見かけ上の違反に基づいて輸入品の通関を拒否するだけの十分な証拠または他の情報を持っていることを知らせます。企業、製品あるいはその両方を警報に記載するための証拠は様々な情報源から引き出される可能性があり、FDAの支部、外国での検査、その他の州、自治体機関などがその情報源になりえます。警告を受けるのは輸入者だけではなく、国も含んだ特定地域を原産国とする製品そのものに及ぶ場合もあります。また、一度、輸入警報に記載されると、輸入者が解除の嘆願書を提出しない限り、その状態を継続することになります。嘆願書にはその内容がアメリカの法規制に適合することの根拠となる情報を含むべきです。